【シリーズ〜成功者たちの構造分析⑭】リゾートは「ホテル屋」ではない。破綻物件を蘇らせる「運営特化型」のアセットマネジメント企業である (CEOブログ)
「星野リゾート」という看板を見ると、彼らが全国のホテルや旅館を「所有」していると思われがちです。 しかし、星野佳路代表の真の革命は、日本の観光業に「所有と運営の分離」を持ち込んだ点にあります。 彼らは不動産(ハード)をほとんど所有していません。彼らが売っているのは、「運営力(ソフト)」というOS(オペレーティングシステム)なのです。
1. 運営特化戦略(Asset Light Model)
ホテルビジネスには2つの側面があります。「不動産投資」と「ホテル運営」です。 バブル崩壊後の日本の旅館は、この2つを混同し、過大な設備投資の借金返済に追われ、サービスの質を落として自滅していきました。 星野リゾートは、ゴールドマン・サックス等の投資家やREIT(不動産投資信託)に物件を所有させ、自分たちは「運営」に専念する契約を結びました。 これにより、BS(バランスシート)から重たい固定資産と借金を切り離し、「身軽さ」を手に入れたのです。 リスクを負わずに、運営受託手数料(売上の数%+利益連動報酬)で確実に稼ぐ。 これが、彼らが短期間で全国展開できた最大の理由です。
2. 再生案件のターンアラウンド・ロジック
星野リゾートの真骨頂は、リゾナーレや界などの「再生案件」にあります。 彼らが破綻したリゾートを引き継ぐ際、最初に行うのは「顧客満足度(CS)と経常利益率の相関」を徹底的に分析することです。 古い施設をピカピカに改修することはしません(投資対効果が悪いから)。 その代わり、地域の文化を活かした「ご当地楽(イベント)」や、スタッフのマルチタスク化による「人件費コントロール」にリソースを集中します。 ハードウェアの欠陥を、ソフトウェア(体験とサービス)でカバーし、収益が出る体質に改造する。 この「再生の方程式」が確立されているため、どんな不採算物件でも「星野のOS」をインストールすれば黒字化できるのです。
3. マスターブランド戦略による集客コスト減
「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO」「BEB」。 ターゲットに合わせてブランドを細分化していますが、すべて「星野リゾート」というマスターブランドの傘下にあります。 これにより、一度「界」に泊まって満足した客は、次は「OMO」に泊まってみようと、グループ内で回遊します。 OTA(楽天トラベルやじゃらん)に高い手数料を払わずとも、自社サイトからの予約比率を高めることができる。 これも、運営特化型企業としての利益率を支える重要な柱です。
結論:持たざる経営の強さ
「自社ビル」や「自社工場」を持つことが信用の証だった時代は終わりました。 資産(アセット)は、時に負債(リスク)になります。 自社のコアコンピタンスが「箱(ハード)」にあるのか、「中身(ソフト)」にあるのか。 星野リゾートのように「中身」だけで勝負する覚悟を決めた時、ビジネスのスケーラビリティは飛躍的に向上します。


