宇宙ビジネス、「ロマン」から「リアリズム」へ。——官民一体で挑む、2026年の生存戦略 (CEOブログ)

2026年が明けて早々、日本の宇宙産業にとってエポックメイキングなニュースが続きました。

三菱重工・三菱電機による「日本低軌道社中」への出資、そしてSpace BDの大型調達。 これまでVCのリスクマネーが主導していた市場に、いよいよ日本の「産業資本」が本格的に還流し始めたと感じています。

上場企業とメガ調達が示す「市場の厚み」

この流れは、単発的なものではありません。 記憶に新しいところでは、インターステラテクノロジズがシリーズFで201億円という、国内未上場企業としては異例の巨額調達を完了しました。ここにはトヨタ系のWovenやSBI、不動産大手などが名を連ねています。

また、先行して上場を果たしたispace(月面開発)、QPS研究所(SAR衛星)、アストロスケール(デブリ除去)といったパイオニアたちが、市場の荒波に揉まれながらも「宇宙銘柄」というジャンルを東証に定着させました。 そして、今年は種田が絶賛応援中の我らがスペースデータにとっても、早くも大飛躍を確実視される一年となりそうです!(乞うご期待!)
彼らが切り拓いてきた道を、今度は重厚長大企業や金融資本が舗装し、より太い「産業のハイウェイ」にしようとしている。2026年は、宇宙ビジネスが「夢を語るフェーズ」を卒業し、「実利を計算できるフェーズ」に入った転換点と言えるでしょう。

「宇宙」を不動産として捉える視点

この変化を先取りしていたのが、総合商社の動きです。例えば、三井物産はISS(国際宇宙ステーション)の後継となる民間宇宙ステーション計画に深く関与しています。

商社のビジネスの本質が「権益の確保」にあるとすれば、彼らは今、「宇宙という新たな不動産」を押さえにいっているように見えます。「22世紀の日本橋」にしようとしていますかね。 広瀬すずにも教えてあげたいです。

実験場、エンタメ、あるいは製造拠点。ISS運用終了後の空白地帯に、日本企業が場所(出張所)を確保しておくこと。これは、かつて世界中の資源権益を確保してきた商社ならではの、非常に理に適った「国家戦略的な投資」だと言えます。

「デュアルユース」というタブーを超えて

そしてもう一つ、私たちが直視すべき「大人の事情(リアル)」があります。それは、これらディープテックの成長における「デュアルユース(軍民両用)」と「官需」の重要性です。

インターネットもGPSも、元を辿れば米国の軍事技術(DARPA)から生まれました。イスラエルが小国ながらスタートアップ大国である背景にも、安全保障上の技術が民間に転用され、経済を潤している現実があります。 「国が最初の、そして最大の顧客になる(アンカーテナンシー)」。 これは、世界的に見ても新産業創出の王道パターンです。

日本においても、昨今の国際情勢や頻発する災害対策を鑑みれば、偵察衛星や通信網といったインフラに国費が投じられるのは自然な流れです。これまではタブー視されてきた有事の「防衛」と平時の「防災」とがセットのニーズとして、結果として民間の商用サービスを鍛え上げ、QPS研究所のような世界レベルの技術企業を育てていく。 そんな好循環を、そろそろ正面から肯定しても良い時期に来ているはずです。

「ゾンビ産業」から「次」へ繋ぐ勇気

ただ、日本には時間もリソースも無限にあるわけではありません。 だからこそ、産業構造の新陳代謝について、少しシビアな視点を持つ必要があります。

成長のピークを過ぎ、付加価値を生み出しにくくなった産業を延命させることに、貴重な予算や人材を費やしている余裕は、今の日本には残されていないのかもしれません。 痛みを伴う議論ではありますが、国のリソースを、宇宙やAI、エネルギーやディフェンステックといった「次世代の飯のタネ」へ大胆にシフトしていく。そういった「選択と集中」こそが、これからの日本の生存戦略になるはずです。

起業家に求められる「マキャベリズム」

こうした環境下では、スタートアップの経営者に求められるスキルセットも変わってきます。 「良い技術があれば勝てる」というナイーブな幻想を捨て、その技術をどう社会実装するか、どう国のルール形成に関わっていくかという、「ロビー活動(GR)」や「応援団づくり」が、技術開発と同じくらい重要になってきています。

そういうのが得意で有名なスタートアップは、すでに日本にもありますけど、さらに、先行する海外事例に目を向けましょう。例えば、ピーター・ティール率いるパランティア(Palantir)を見てください。 彼らは創業当初からシリコンバレーの潮流に逆らい、CIA(米中央情報局)や国防総省といった「国家機関」を最初の顧客として深耕することで、最強のデータ解析企業へと成長しました。 また、SpaceXが勝てた理由も、イーロン・マスクが稀代のイノベーターである以上に、卓越した政治家(アジテーター)でもあったからです。

清濁併せ呑み、政治力や人脈さえも駆使して目的を達成する。そんなある種の「マキャベリズム」すらも、これからの起業家が持つべき「総力戦」の武器の一つと言えるでしょう。

空を見上げて詩を詠むロマンも素敵ですが、空に線を引いて商売をするリアリズムもまた、面白いものです。 私たちセグレト・パートナーズも、この大きなパラダイムシフトの中で、本気で世界を目指す企業の皆様の「触媒」となれるよう、微力ながら、引き続き力を尽くしてまいります。