「計画」か「漂流」か。インタビューで語りきれなかったキャリアの羅針盤(CEOブログ)

先日、「Zen-Biz Online」というメディアでインタビューを受ける機会がありました。 私のキャリア——テレビ時代の番組制作から、IT黎明期の新規事業、そしてVCやゲーム会社経営を経て現在に至るまで——を振り返る、よい棚卸しの時間となりました。

https://zen-bizonline.com/interview/2026/01/22/14821

その中で、「キャリアは堅実に計画すべきか、それとも敢えて環境に流されるべきか?」という問いがありました。 記事では「どっちもアリだけど、どっちでもないのが一番もったいない」と答えましたが、実はこのテーマ、もう少し深く掘り下げる価値があります。

今日は、記事には載せきれなかった「戦略的漂流(Strategic Drifting)」という考え方について、少し補足させていただきたいと思います。

優秀な若者ほど「地図」を持ちたがる

最近のスタートアップ経営者や、相談にいらっしゃる若手の皆さんは本当に優秀です。 彼らは詳細な事業計画(地図)を持っています。「5年後にIPO、8年後に時価総額◯◯◯億」といったマイルストーンも明確です。

その堅実性は誠に素晴らしい。しかし、同時に危うさも感じます。 なぜなら、彼らの「地図」は、地形が変わらないことを前提にしているからです。

私が社会に出た頃、誰もスマホの登場を予測していませんでした。電光掲示板みたいなデバイスがニューメディアとか言われていましたが、こんなに面白くないものが流行るわけがないと思っていました。i-modeが出てきた時、それが巨大なプラットフォームになると確信していた人も稀でした。 わたし自身、フジテレビに入社した頃は「華やかで人気のマスコミ業界」を目指していただけの、ただのミーハーな学生でした。もし当時、綿密なキャリアプランを立てていたら、「マルチメディアやらニューメディア関連の部署に異動して、スマホサービスを作る」なんて道は、"計画外のノイズ"として排除していたでしょう。

「流される」ことの効能

私はインタビューで「流されるのも悪くない」と言いました。 これは「何も考えずに惰性で生きる」という意味ではありません。「波が来たときに、乗れるだけの余白を持っておく」という意味です。グリーの田中良和社長は、昔から、「大きな波に乗れるのは、沖で波待ちしていた人だけ」だとおっしゃっていましたが、それのフワッとした版でしょうか(笑)

ビジネスの世界では、最大のチャンスは往々にして「想定外の方向」からやってきます。 ガチガチに計画を固めていると、目の前に現れた「異質なチャンス」をスルーしてしまう。あるいは「今はKPI達成に集中すべき時期だから」と、自ら可能性を閉ざしてしまう。

これはM&Aの現場などでもよく見られる光景です。 「シナジーが見えない」と論理的に却下した案件が、実は数年後に化ける種を持っていたりする。逆に、計画通りの美しい統合が、現場の熱量を削いで失敗に終わることもある。

羅針盤だけ持っていればいい

これから起業する方、あるいはキャリアに迷っている方に伝えたいのは、「地図(計画)は捨ててもいいが、羅針盤(価値観)は持っておけ」ということです。

私の場合、羅針盤の針は常に「新しいこと」「面白そうなこと」「人が集まる場所」を指していました。だからこそ、テレビからネットへ、番組からゲームへ、コンテンツから投資へと、職種が変わっても迷子にはなりませんでした。

現在、私はセグレト・パートナーズとして、企業のM&Aや資本政策、事業開発やマーケティングを支援しています。 この仕事もまた、クライアント企業が持つ「想定外の可能性」を見つけ出し、新しい海へと送り出す役割だと思っています。

計画通りにいかないことを嘆く必要はありません。 むしろ、計画通りにいかない時こそ、「想定外の波」に乗るチャンスかもしれない。 あまのじゃくな視点かもしれませんが、そんな風に柔軟に構えていた方が、経営という長い航海は楽しめるものかもしれません。